迷いながら仕上げた1枚

チャレンジ作品

 自然公園の中でみつけた大きな切り株を描いた20号が、何とか描き終わりました。静物画のつもりで「春の花や若草にかこまれた切り株」を描こうと思ったのですが、予想外に難しく、どう描いたら良いのか途中でわからなくなり、最後まで迷いながら仕上げた1枚です。

制作過程

①何が難しいのかと言えば構図や背景です。実際に見たままには描きませんでした。切り株をいろいろな方向から見て、最もどっしり感のあるところを選んだのですが、その方向から見ると花が少ないです。花は別にスケッチしてバランスを見ながら配置することにしました。主役の切り株をどれくらいの大きさに入れるかも迷いました。余白が多い絵(→あえて余白を作ります)は家族には好評でしたが、小さい画面でイラストのように描いているからそれで良いのです。大きな作品でマットの入った額縁に入れることをイメージすると、やはり古い切り株の存在感があった方が良いと思い、大きく入れました。背景や地面にもいろいろなものがありましたが、ここを全部描きこんでしまうのが私の欠点で窮屈な作品になってしまいます。あえて、木の周辺しか描かないことにしました。

②木の大きさや位置を決め、周りには何も描かないで下描きが終了。着彩に入ります。切り株の形に合わせて、背景に何となく色をおき、切り株は立体感にこだわり新しい方法を試してみます。(→グリザイユ技法?)色は気にせずに青紫で陰影だけを追って形をつかみました。大きな草は色をはっきりさせたいので塗り残しました。

 

③その上に色を置いていきます。青紫の上に茶色や緑を重ねていくと、面白いきれいな色が出て来て、この技法は結構気に入りました。形はできているので色をのせていくだけ、この作業は楽しいです。ただ、透明水彩なのであまりいじりすぎると下の青紫はにじんできてしまいます。さらっと描けるように穂先がしっかりとした少し大きめの丸筆を買いに行きました。絵の具をたくさん含むので広い面もどんどん塗れるし、細かいところも思いどおりに描けるので便利です。
 左下は何となく地面の色(?)を置いてみました。くり返しやってしまった「背景を何となく」に後で苦しむことになります。

 

 

④切り株全体に色を置いてみたら、青紫の時より立体感がなくなったような気がしたので色を取ったり重ねたり微調整をして整えていきます。後は周囲の草花を描いて完成するはず・・だったのですが。

 

⑤草や花を描くことはそれほど難しくはありませんでした。塗り残した大きな葉や花は、はっきり目立ってくれました。それだけでは寂しいので、水で描いて色を取りながら草花を増やしました。
 この段階で行き詰まります。左下の何となく置いた地面の色にどうつなげていけば良いのかが全く思いつきません。そもそも木の周辺以外は描かないと決めたのに、さして考えずに色を置いてしまう無計画さ。実態のない空(上の方)ならまだしも、根を張って草も生えている地面は描かないのならどう処理するのかはしっかり決めるべきでした。右下のぼかした感じは気に入ったので、これは活かしたい・・。左下もぼかした方が良いのか、でも先に置いた色はある程度うすくはできても完全には取れません。

⑥迷ったあげく、左下は少しはっきりした色を置いてみました。草に使った色ですが、抽象的な色面です。春のイメージの色を置いていくことにしました。右側に寄せた切り株を描きこんだら絵の片方だけが重いような気がしていたので、これでバランスは取れました。ただ、この色面が他とあまりにも異質なので誰かに見せるたびに不評です。結局、描きこんだ部分とうまくつながっていないからです。
 でも、今まで何回も色を重ねたり取ったりしてきたので、いくら丈夫な水彩紙でもガサガサになっています。もう、この部分に手を加えるのは無理です。

 

⑦頭の中を「何が描きたかったのか。」に戻しました。実は題名も最初から決めていました。「春を纏う」です。主役の切り株がまとっているのは「春」であり、わかりやすくするために草花を描いただけです。もう消すことのできない草色は「春の色」と考えて広げていくという暴挙に出ました。失敗したら、今度こそ終わりです。  
 これで良かったのかどうか、自分では判断がつきません。

 

絵を作る難しさ

 私は発想やひらめきには乏しく、色のセンスもありません。見たものを見えたように描くことはできるようになって来ましたが、それは知識とくり返しの練習によるものです。そんな私には風景画は向いていたのだと思います。目の前に拡がる風景、そこに立っている大きな木、どんな感じに入れようか、どこからどこまで入れようか・・。その風景を切り取った時にもう構図は決まってくれます。いらないものは省いたり、ほしいものを加えたりもしますが、遠近法に基づいて入れていきます。遠くをぼかして、近景をはっきり描
けば、平らな画面の中に奥行きも表現できて、そのまま仕上がっていきます。画面の中に描いているものすべてが目の前にあるわけですから、色も迷うことがありませんでした。

 静物や人物を描くとなるとそうはいきません。そう言えば、もう長いこと大きな人物画や静物画をきちんと描くことはありませんでした。小さなスケッチブックにさらっと描いて、簡単に色をつけてということはよくありますが、背景は白いままとかチョンチョン色を置いて終わりです。記憶が20代まで遡るのですが、静物や人物を描いた時、背景をどのように着彩していけば良いのか、いつも頭を悩ませていたような気がします。主役を引き立てていく色、塗り方など、考えることが多すぎるのです。

 そもそも今回は切り株の入れ方、花の配置、下描きの段階から考えて決めることばかりでした。その段階で完成作品のイメージはもっとしっかり持つべきだったと思います。春の明るいふわっとした感じにしたかったので、今回は透明水彩だけで描きました。そのために余計、修正が難しくなったのだと思います。失敗したら塗りつぶしが可能でいくらでも描き直せるアクリルガッシュが恋しいですが、色は絶対に透明水彩の方がきれいだと思うので、今後も頑張ってみます

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