描き方のポイント 1

絵を始めたい方

 私の失敗例を参考に、知っていると形がとりやすくなる、描きやすくなるようなポイントを紹介していきます。

 画材の試しで描いてみた「儀林寺の椎の木」、高い所から人々を見守っている感じが全く出ませんでした。原因に心当たりはあったので下描きを描き直してみました。先にお詫びですが、下描きだけで済ませるつもりだったので100円ショップの画用紙に描いてしまいました。家族に「色塗らないとわからない。」と言われて着彩してみたものの、やる気、集中力今ひとつ。一部分だけの着彩でお許しください。やはり水彩画は紙が重要です。

 

 Bは山のふもとの位置をAよりも1㎝ほど上に上げています。つまり地面が広くなり、その結果、上から見下ろした感じが出ています。Aでは写真で見るよりも少し低めにふもとの位置を描きました。そのために椎の木の立つ場所が低くなってしまったのです。なぜ、そんな失敗をしたのかと言えば、下描きがほぼ完成した時です。横に伸びている枝が山のふもとのラインとつながっていることに気がつきました。こんな長い線は絵の中で妙な目立ち方をします。木の形をとるのが結構大変で枝を描き直すのも面倒だったので、「これくらいなら大丈夫。」とふもとの位置の方を5~6㎜下げたのですが、全く大丈夫ではありませんでした。

地面の終わりの線

 何も遮るものがなくどこまでも見渡せるなら「地平線」という呼び方がありますが、実際にはそんな風景を描くことはあまりないので、私は授業で説明する時にも「地面の終わりの線」と言っていました。この線の位置は重要で、いつも最初に決めるように言っていました。(それなのに動かしたのだから自分に呆れます。) ある程度遠くまで見える場所なら、地面の終わりは、ほぼ自分の目の高さです。下の3枚は目の高さによる見え方の違いを表したものです。                

A 地面に腰を下ろして描いていれば、木の高さ、空の高さを感じます。地面にあるものは重なり合って見えにくいかも知れませんが、草や花のにおいや地面の暖かさなども感じられると思います。そんな絵が描けたら良いですね。

B 普段、見ている景色です。歩きながらいろいろなものが見えます。きれいなもの、おもしろいものをみつけて立ち止まって描くという感じでしょうか。

C 見下ろしているので、地面にあるいろいろなものの形がはっきり見えます。

地面にあるものの位置

 たくさんの木が生えていたり、道や川、大きな石があったり、地面の上にはいろいろなものがあります。地面の終わりの線が決まったら、それらがどの位置にあるのかも確認しておくと奥行きが出しやすくなります。遠くにあるものほど、画面の中では高い位置になります。

①ほんの少しでも根元ラインが上にあれば、その木は遠くにあることになります。
②遠くにいくほどラインの差はなくなりますが、ほんの数㎜でも、上にある方が奥です。
③くねくね曲がった道なども、曲がる位置を決めておくと描きやすいです。

遠くのものは小さく見える

 同じ大きさの木が並んでいたら、同じ高さの建物が続いていたら、同じ幅の道がまっすぐに続いていたら、下図のように見えるはずです。遠くまで続いている並木は根元の位置は上に上がっていきますが、梢の方は下がってきます。最後はひとつの点に集まっていくので一点透視と呼ばれます。

 

 このような透視図法にあてはめて描くこともできますが、そんな風景ばかりではないので、地面での位置を決めたら、遠くのものは小さめに描くを意識していれば良いと思います。

 

背景としての地面

 広い風景を描くのではなく、大きな木とか形のきれいな建物などを主役として描き、その背景に地面が入る場合もあります。例えば校庭の大きな木を描く場合は、よくこんなアドバイスをしました。

①木のどこからどこまでを入れるかを決めて、まずしっかりと木を描く。
②グラウンドの終わりの線は木のどのあたりに見えるか、下の方の枝と見比べて上か下か。
③周辺の木や防砂ネット、バスケットゴールなど描いた木を物差し代わりに、位置や大きさを決めていく。

 

描きたいものを描く

 たった1㎝がこんなに違うのかと「地面」について書いてきました。ここを間違えると奥行きが出なかったり、その空間の雰囲気が変わってしまうからです。でも、見えるものをすべて描かなければいけないということはありません。実際の風景の中にあっても「絵の中に入れたくはない。」と思うものは描かなくても良いんです。私など何度も大木の前に立っている「○○天然記念物」とか「保存樹木」の看板を消しています。その後ろに隠れていた幹のゴツゴツを自然に描くのに苦労しますが、自分の描きたいように描けるのが、絵の良いところです。また、構図の上でどうしてもバランスが悪いところも出てきます。今回の失敗も枝とふもとのラインが重なるのがどうしても嫌なので、枝の形を変えていくしかないでしょう。でも、木の形や太さなんて千差万別ですから、そこは実物とぴったり同じである必要もありません。注意深く観察して描かなければいけない所と自由に描いても良い所があるのです。

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