描き方例
前回の投稿(→チャレンジあるのみ その6)から間もなく3週間、用事のない日はひたすら描き進めて、ほぼ完成となりました。普通の風景画なのに2種類の絵の具を使って描いています。見る人が見たら、「こんなのは邪道だ!」と思われるかも知れませんが、私が大好きな古木を私の描写力で納得できる形に描くのは、今のところはこの方法がベストです。画材の特徴を活かして「良いとこ取り」をしたつもりになっています。
10月27日
現在
透明水彩で描いた部分とアクリルガッシュで描いた部分、その絵の具を使った理由を紹介しておきます。
【透明水彩】
①良いところ
塗り残した紙の白で、「光」を表現できます。絵の具の発色も良く明るい緑がきれいです。ぼかしも自然な感じにできます。重なり合って複雑な色が出せます。
②困るところ
暗い色の上に明るい色がのらないので塗り残す必要があります。細かい葉やツルなどはマスキングインクを使っても私には無理です。いくら重ねても暗さには限界があります。さらっと描くのに向いている絵の具なので、幹のどっしり感は私には出せません。複雑な幹の形を何度も描き直しているうちに、どんどん汚くなってしまいます。
【アクリルガッシュ】
①良いところ
乾いてしまえばもう色が落ちることはないので塗り重ねがいくらでも可能、複雑な幹の形を納得するまで描くのには向いています。暗い色の上に明るい色をのせても下の色をかくしてくれるので、葉や細いツルは後からはっきり描けます。
②困るところ
乾いたら落ちないということは、塗りつぶすしか修正の方法はありません。太い幹や暗い茂みならともかく、光を表現している明るい部分には不向きです。先に描いた色を後から描いた色がかくしてしまうので、色が単調になります。水を多めに入れて使うこともできますが、透明水彩に比べて発色も悪いです。
同じ木の中に、透明水彩で描いた部分とアクリルガッシュで描いた部分があるのですから、境目あたりの色味を合わせるのは大変です。不自然に見える部分もあるかも知れないし、お勧めするような描き方でもありません。でも、私としては描きたかった感じには描けたので良しとしたいと思います。
画材の特長を知り、描きたいものに合わせて選ぶということは大事です。余程の技術があれば何を描いても作品にできるのかも知れませんが、道のりが長すぎます。描きたいものを選び、どんな感じに描きたいかを決め、画材やその技法について理解してから描き始めるのが、「描けた!」につながる近道だと思います。(→絵を始めたい方へ・画材選び)
描いてみてわかること
透明水彩のような発色がなくても、学童用の水彩絵の具なら誰でも使った経験はあるはずです。アクリルガッシュも最近は中学校や高校で教材として取り入れられています。どちらも手軽な画材ですから、特長を理解した上でいろいろ描いてみることが大事だと思います。本に書いてあることやネットの動画なども参考になりますが、実際にやってみないとわからないこともたくさんあります。何十枚も描いて自分で会得していくしかないのでしょう。例えば次のようなことです。
①教員をしている頃、「絵の具に水をどれくらい入れれば良いですか?」「絵の具をどれくらい作れば良いですか?」と聞く生徒はいました。退職後、大きな画面で水彩画を描くようになって水の扱いは本当に難しい。大きな四つ切りの画用紙に描かされている生徒の質問、ごもっともです。絵の具の作り方だけでなく、ぼかしたりにじませたりする場合の画面の湿り具合とか、水の引き方とか・・。何度やっても思うようにはいきません。技術が熟練していないだけでなく、水彩紙の厚さや種類、筆の大きさなど道具も不十分だったのだとわかります。それでまた、試します。アクリルガッシュを使いながら「水の量を気にしなくて良いから楽」という生徒もいました。べた塗りで紙どころか木にも石にも描ける絵の具ですから、その感じが好きな人には持ってこいです。でも、こちらもパレットに作った色が乾いてしまったらもう使えないという問題点がありますから、絵の具の管理には気を遣います。
②私自身や生徒達の制作を見ての印象ですが、アクリルガッシュは何回も描き直し、試行錯誤を繰り返すうちに絵が良くなってきます。下の色が隠されてしまうベタ塗りであるにもかかわらず、何となく画面の中にいろいろな色ができて来るからでしょうか。しかし、透明水彩は描き直しをしているうちに、どんどん色がにごってボロボロになって来ます。だからこそ、道具や色、技法の知識や見通しを持って塗り残したり色をおいていく計画性が必要なのだと思います。失敗して身につくこともたくさんあります。
いろいろ描いているうちに、自分に合った描いていて楽しい描き方は見つかってくると思います。この2つは手軽に取り組めて性質の異なる画材です。
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