チャレンジあるのみ その9(2024/2/28)

とものつぶやき

 どうしたら描きたいものが描けるのか、完全に煮詰まっています。そもそも私はなぜ「大きな木」ばかりを描いているのでしょう。中学校で教えている頃は水彩画といえば校内や近くの公園の風景を描かせることが多く、私は「好きな木をみつけてしっかり描こう。」というのが好きだったので、そんな指導をしてきて自分でもまあまあ描けるようになっていたというのもあります。そして、退職する頃に描いた巨木の作品がたまたま好評だったので、そのまま描きたい巨木を探すという生活になってしまいました。
私が「好きなもの、描きたかったもの」は何だったんだろう・・?教員生活のあいまに描いたもの、学生時代に描いたもの、遡っていくと「空」だったことに気づきました。雲のない真っ青な空です。秋から冬にかけて葉を落とした高い木の梢の枝が青い空に伸びて消えていくイメージ、そんな絵を描いていたことを思い出しました。

 私は谷川俊太郎という詩人が大好きでした。大学生の頃には詩集を何冊か持っていて、作品を作る時にそのイメージが浮かぶことも多かったので、最初は教科書に載っていた詩に興味を持ったのだと思います。空とか星を見るのが好きな中学生だったので、「二十億光年の孤独」という詩集の名前に引き込まれたのかも知れません。無限とも言える「時間」や「空間」の中に「自分」もいることを、いろいろなかたちで気づかせてくれました。その頃、「大きな木」と同じように時間や空間の大きさを感じることができるものは「真っ青な空」だったのです。
 無限の時間や空間の中では、私も巨木もひとつの個体かもしれません。でも、ちっぽけな私から見た巨木は「大きな空間と長い時間」が形になったもので、それが無限の空につながっていくというイメージが何となく出てきました。私の中で空に伸びていく姿がすぐに思い浮かぶのは上植野の「千年の椎の木」なので、これで試していきたいと思います。

 以前描いたもの(→チャレンジあるのみ その7)の着彩前に下絵をコピーしておきました。複雑な木の形を最初から描く根気がないので、ずるいやり方ですが何回も練習したい時に使う手です。大まかな輪郭をトレーシングペーパーで転写してから、下絵を描き始めます。それをなぞるわけではありませんが、うすく線が入っていれば形が狂わないので楽に描けます。

8枚目

 空のイメージで2種類の青をぼかしました。やはり思い通りにはいかず、バランスをとるためにラインを入れてしまいました。梢の方は空に溶け込むように見せたいと、空の色にしました。遠くの風景も空の続きに溶け込むように描きたくなり、かなり遠くになりました。空に枝を伸ばすように下にある大地にも根が伸びているのではないかと思えてきました。上下に空の色を入れました。  

    

9枚目

 空の面積を広くしてみました。空というよりも宇宙につながるくらいのつもりで描いたら、青が強すぎました。根を張っている場所の面積は少ないので、ここも空(宇宙)の色を入れてみました。もう、滅茶苦茶です。

 

10枚目~

 本当にもう試しです。果てしなく広い空間、長い時。絵の上下が感じられない方が良いんじゃないかと、コンビニに走ってコピーしたものを切り刻みながら考えました。コピーは5枚ずつ、曲線だけでなく直線でも切り分けてみたのですが、なかなか思うようにはいきません。残骸ばかりが増えました。

 

 私にはその技術がありませんが、パソコンソフトを自由に使いこなして絵が描けたら、こんなアナログ作業をしなくても、色やレイアウトをいろいろ試すことができて発想も広がっていくのかもしれません。頭の中ではぼんやりとしかつかめないイメージも実際に画面の中に作ってみれば効果は一目瞭然で、更に手を加えながら自分のイメージに近づけていくことができるのでしょう。さすがに手描きでは、そこまでの冒険はできません。何枚描いても、同じような作品になってしまいます。

 3ヶ月ほど、この作業をやってきて、結局何もつかめなかったのですが、もうすぐ3月、ちらほら花も咲き始めました。普通に風景画も描きたくなってきたので、また新しいモデルさんでも探しに行こうと思います。

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